みなさんこんにちは
長崎県雲仙市愛野町の鶴田歯科医院の宇田です
今日は、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)のお薬についてお話をします(あくまで一般の方向けに簡単にお話をします)。
なぜ歯科なのに骨粗鬆症の薬?と思うでしょうが、実は骨粗鬆症のお薬には、歯科治療と関係があるものがあるのです。
『骨粗鬆症』とは、骨がもろくなり骨折しやすくなってしまう病気ですが、性ホルモンバランスの変化や加齢が主な原因であり(ご高齢の女性の方に骨粗鬆症の方が多いのはこのため)、ステロイドなどの服用薬、生活習慣(食事、運動、喫煙、飲酒など)も一因となります。
そして、『骨粗鬆症』のお薬にはいろいろな種類のものがあり、その中で第一選択として選ばれる(まず真っ先に選ばれやすい)お薬が『ビスフォスフォネート系製剤(長いので以下BP製剤と呼びます)』です。お薬は飲み薬と注射薬があり、飲み薬であればだいたい「朝食前にコップ1杯の水で内服して、そのあと30分ほど食事をしたり横になったりできない」という特徴があります。私の祖母も現在このお薬を飲んでいます
。
実は、この『BP製剤』という種類のお薬を注射もしくは長期的内服している方は、『顎骨壊死(がっこつえし)』といって、わかりやすくいうとあごの骨が腐ってしまう状態になる可能性があることが世界で報告されています。そしてそれは、特に抜歯などの骨に触れる外科治療を行った際に発症するリスクが上がると言われています。『顎骨壊死』になってしまうと、重症のものであればあごの骨が広範囲で無くなり、顎義歯(がくぎし)という骨の部分まで覆う大きな入れ歯をいれないといけなくなる症例もあります。
しかし、この件については世界的に見てもいまだ研究段階であり、厳密には『BP製剤』が必ず『顎骨壊死』を引き起こしているという因果関係は完全には解明されていません。だがしかし、『BP製剤』を使用している方の中でわずかですが(1%未満〜3%と研究報告によって発症率はばらつきがある)、『顎骨壊死』が起きているのは事実です。
さて、では『BP製剤』を使用している患者様に抜歯などの外科治療を行わないといけなくなったとき、どうすればいいのか・・・いろんな意見がありますが、日本の歯科界では、『顎骨壊死のリスクを患者様に説明し了承を得てから抜歯をする。ただし3年以上BP製剤を内服している方、3年未満であってもBP製剤とステロイド製剤と併用して内服している方や糖尿病の方などは抜歯前3か月+抜歯後2か月のBP製剤の休薬が望ましい』というのが一般的です。
鶴田歯科医院でも、骨粗鬆症でBP製剤を服用されている患者様は少なくなく、抜歯を行う際に私達が『できればBP製剤を一時休薬できないでしょうか』と伺うのはこのためなのです。
しかし、そもそも骨粗鬆症というのは日常生活において骨折しやすい病気なのですから、いくら抜歯をするからといって、むやみに休薬をしても体が骨折をしてしまっては元も子もありません。休薬するときは必ず!処方してもらっている担当のお医者さんの許可がなくてはいけません。もしお医者さんが「骨折する危険性が高いので、BP製剤を休薬することはできない」と判断されたのであれば休薬はせず、患者様に「顎骨壊死」のリスクを了承していただいた上でないと抜歯などの外科処置はできません。もちろんその際は、私達も外科処置を行う際に細心の注意を払い、なるべく「顎骨壊死」が起きにくいように処置をしています(これはどんな患者様であろうと常にですが)。
最後に、BP製剤を使用されている患者様に、少しでも「顎骨壊死」を起こしにくくするためにお願いしたいことがあります。それは、『ブラッシングを極力丁寧に行い、お口の中を清潔に保つ』ということです。お口の中のばい菌が増えればそれだけ「顎骨壊死」になりやすくなるからです。みなさん、私たちと一緒に歯磨き頑張りましょう
!!